【新曲】le passé (feat. Kako) について

新曲「le passé (feat. Kako)」を投稿した。

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この曲の制作について自分用に備忘録を残しておく。

1. 構想

まず新曲と銘打っているが厳密には過去の自分の下記楽曲のリアレンジとなる。

soundcloud.com

これは自分が5年以上前に制作した曲で,制作当時からボーカル曲にしてみたいという思いがあった。今回作詞者から上記の曲が気に入ったので歌詞をつけたいという話を頂き,それなら思い切ってAメロなりを追加して新しい楽曲を作ることにした。

原曲を制作した時の思いとして,戻れない過去に戻りたいと渇望するというただただ暗いテーマがあった。その思いをベースにしつつ作詞者に世界を膨らませてもらった。

ボーカルは最初ボーカロイドを想定していたが,色々あってかこ様(Twitter: @kako_uta)に依頼した。これは偶々なのだが「かこ」さんに「過去」を主題としたこの楽曲のボーカルを担当して頂けたのは何かの縁だと思った。

動画については作詞者の作った歌詞をベースにみとう。様(Twitter: @mitou119)に依頼した。動画については後述。

2. 作編曲

原曲はどちらかといえばAvicii系のEDM(プログレ系? 何と言うのかわからん)で,ドロップで音数がめっちゃ増えるタイプの華やかなEDMになっているが,今回リアレンジするに際して折角なら全く別のジャンルにしようと思った。ちょうどFuture HouseやらBrazilian Bassやらにハマってた時期でもあったのでFuture Houseに初挑戦することにした。今までドロップで音数がめっちゃ増えるタイプのEDMは数多く制作してきたが,逆にドロップで音数が減るタイプのEDMは初めてだったので音選びやサンプル素材などの選択が難しかった。ただしミックスはめっちゃやりやすい。むしろビルドアップがむずい。

リファレンスとしてはIdentity (Pe Tira Remix)やDavid Guetta & Showtek - Your Loveのあたりを参考にした。結果的にはFuture Houseっぽいメタリックなベースよりはちょっとマイルドな感じになったが,跳ねたリズムとハウスの上物は利いている筈なので一応Future Houseということにしておこう(?)。

楽曲の構成としては,EDMボーカル曲でありがちなドロップでそのまま終わりという構成ではなくその後にもう一回ビルドアップがきて終わるというちょっと特殊な展開になったので,2回目のドロップと最後の展開との接続に苦労した。

原曲の要素も受け継ぎたいと思い,イントロと最後に「ミ♭ファソ♭シ♭ッレ♭ミ♭ッ」というモチーフを入れた。開幕でこのモチーフのFilter Cutoffが開いていってスパソがブワーーーーとなる部分は個人的に気に入っている。あとBメロは原曲のビルドアップと同じメロディーを受け継いでいる。

間奏は最初ピアノだけだったが何かエモめの音色が欲しかったのでひたすらHaLionを物色してなんか良い感じのフルートっぽい音を入れた。本当は猫叉Master楽曲によくあるあのいかついリードが欲しかったが使用シンセすら不明で無理だった。猫叉Masterは是非DTM配信をしてほしい,出所が知りたい音色が多過ぎる。旋律としては32分のトリルをふんだんにちりばめてエモみがでるよう工夫した。

ボーカルパートについては,仮歌段階でAメロが非常に複雑で歌唱が難しい旋律となりボーカルを担当して頂いたかこさんには申し訳なかったが,それでもしっかり感情の籠った歌唱データが帰ってきたのでこれでいくことにした。

3. ミックス

かこさんから素晴らしいボーカルデータを頂きいざミックスという段になったが,初めて人間の生ボーカルを扱ったので非常~~に本当に難しかった。Cubase 8 ProにVariAudioが附属していたので使うソフトには困らなかったが,全体を通して調整が難しかった。

まずVariAudioでピッチとタイミング調整を行ったが,行えば行うほどプロジェクトが死ぬほど重くなっていき大変だった。かといってレンダリングすると後でピッチは弄れなくなるのでインストをよく聴きながら地道に調整した。またピッチクオンタイズや平坦化の塩梅加減も非常に難しかった。

次にCompressorで音量ムラをつぶしたが,ボーカロイドと違って人間の声は音量ムラが物凄く,全然うまく圧縮できなかった。したがってVolumeのオートメーション等を駆使し,できるだけ唐突に飛び出たところのないように,しかしビルドアップで他の楽器に干渉される箇所は聞こえるように微調整したりした。

次にDesserなどで破裂音や摩擦音,破擦音などのノイズを消そうとしたが,なぜかうまく消えない。結局子音部分だけ切り取ってVolume調整した。これについてはなんかいいプラグインを買えば解決しそうなのでMKさんやKSHMRの動画を漁ってみようと思う。

そしてOTTやらEQやら空間系やらで微調整をして何とか形にした。しかし未だボーカルのミックスについては謎が多い。ボーカロイドを扱う時と比べて人間の声がいかに複雑で扱いが難しいかがよくわかった。とりあえずコンプ差してノイズ消して音量調整してはい終わり,とはいかない(とはいえボーカロイドもガチプロになると凄い処理をしてそうなのだが…)。また複雑であるがゆえに人間の声はちゃんと処理ができれば歌声に籠った情感がとても豊かになると思った。息継ぎ一つとっても色々な響きがある。今後ボーカルのミックスについては継続的に勉強して行きたい。

ドロップのミックスについては,ベースとキックが重なる部分の処理に困った。ベースはSerumから作ったが,これ単体で低音がかなり出ていたようなのでサブベースは特別入れなかった。どっかのTipsでサブベースをダッキングするというのをみたので,それに倣ってベースをマルチバンドコンプに通してキックに干渉する低音部だけサイドチェインで潰した。

クラップについてはやり過ぎずやりなさ過ぎずくらいのReverbをいれると丁度いい感じになった。最初はdryにしていたがやっぱりややwetな方が良い。

こういうFuture Houseとかのガチガチの「クラブ」的なジャンルはドロップを箱で聴いた時にどんな感じになるかが割と重要だと思うのだが,自分はいかんせんこっち系のEDMを作って箱で流したことがないので当然よくわからなかった。そもそもモニタリングスピーカーがないので友人宅のモニタリングスピーカーで調整した(早く買え)。ベースをもっとバリバリに出しても良かったかも知れない。

4. MV制作

先述の通り動画の制作はみとう。様に依頼した。作詞者と私とで細かいタイミングやら展開やらあれやこれやと様々な注文をしたが,全て快く応えて頂き本当にありがたかった。展開としては1番に登場した部屋が2番では浸水しているという,色んな意味を示唆する内容になっている。個人的お気に入りはドロップのかわいいループアニメーション。よく見ると1番ドロップのループで最後の女の子だけが泣いていて作り込みが凄まじいと思った。終盤の水の中から浮上しようとしている女の子も印象的だった。

なおこのMVの制作や裏話についてはみとう。様の方で近く同人誌に載せられるそうなので,詳細がわかり次第この記事でも紹介しようと思う。みとう。様のアニメーションが気になった方は是非。

5. あとがき

この曲は既に今年1月の時点で構想があったものだが,私が就職して超絶多忙になったり耳が不調になったり色々あって完成まで非常に長くかかってしまった。制作に関わって頂いた皆様には多大なるご迷惑をおかけしたが,ひとまずやっと形になって公開できたと思うとほっとする。

やはりDTMは楽しい。今後もどんなに多忙になってもずっと続けて行く。