【新曲】千葉ロッテマリーンズのチャンテ5をEDMにしてみた

https://youtu.be/qaBYJ_DnHAQ

というわけで新曲を公開したので自分用の備忘録を兼ねて着想とか工夫した点とかを書き残しておく。

 

まず着想としてはかなり前の段階からあった。私がプロ野球を観始めたのが3年前の2018年のシーズンだが,初めてロッテのチャンテ5がテレビ中継で流れた時に「何だこれは…かっこ良すぎる…」と鳥肌が立ったのを鮮明に覚えている。ロッテの応援団は12球団で一番と言って良いほど応援の声量が大きい(と思う)ので,やはり力強さがある。メロディ自体も燃える系かつちょっぴりエモい系な感じでかっこいい。そういうところが好きになった。

以来12球団の応援歌で一番好きな曲で,いつかはリミックスしたいなあと考えていた。

 

そして最近形にすべく作り始めたが,いざ作り始めるとノリノリになって楽しくなって完成まで割とあっという間だった。CymanticsがCOVID-19のセールで色んなサンプルパックを無料で頒布していたのだが,その時に落とした6GBに及ぶ膨大なサンプルが創作意欲を駆り立たせてくれた。マジでありがとう…Cymantics…

 

【キック】

ドロップのキックはダブステップ用のキックがしっくりきたので使ってみた。前作の約束の彼方(CUE-JIT Remix)でドロップのキックのローがブーストしてもなお足りてない気がしていたので,最初からローがそこそこあって重くて硬すぎないリリース長めのキックを選んだ。今回のキックはローもリリースもまあまあいい感じだと思う。

 

【ベース】

ベースはミッドとサブの棲み分けを意識した。Ozoneイコライザーで慎重にカットした。サブが抜けるように序盤のキックの低域の一部を削ったりもした(40Hz以下)。ドロップのキックは削ったら台無しなので何もしていない。サブベースとキックはサイドチェインで完全に分離した。サイドチェインはオートメーション描くのがオススメです。結局コピペするから楽なんよね。あとEDMのグルーヴ感はサイドチェインで決まってくるので自由自在にいじれるオートメーションはやはり最強。あとサブはmonoに,ミッドはstereoにした。ベースのステレオ感の棲み分けはC-showさんのDTM動画でやっていたので真似た(あそこまでではないが)。ちなみにMKさんのDTM動画ではサブをstereoにしていたりしたので,低域ほどmonoに高域ほどstereoにという教条主義的な考えには拘泥せずアレンジメント次第で柔軟に考えるべきだと思う。

 

【全体のミックス】

今回の曲は空間調整がめっちゃうまくいったと考えている。これまでmixでは音域の棲み分けとかステレオ感とかそういうのばっかり気にしていて空間というものに向き合っていなかった気がするが,reverbやdelayを使って奥に引っ込める音を考えるという基本に立ち返ってみることでうまくEDMっぽい密なサウンドにできたかなと思う。MKさんかC-showさんか忘れたがDTM動画で「Reverbで空間を埋めていきます」みたいな説明があってそれが印象に残っていた。今回は応援歌をサンプリングしてめちゃくちゃ深いリバーブをかけていて,応援歌が流れる箇所は基本的にそれが奥に位置している感じになっている。応援歌が流れていない箇所はその都度奥に詰める音を決めた。padにリバーブかけたり,lpfしてるリードシンセにディレイかけたり。空間系エフェクトかける前と後を比べるとやっぱり全然密度が違う。空間系,大事!ちなみにTipsだが元から片耳に偏ったサンプルは深めのリバーブをかけると定位が気にならなくなる。応援歌のサンプルがだいぶ右に偏っていてその処理に苦労していたが,リバーブが解決してくれた。

あとドロップに入った瞬間にOzoneのmaximizerのthresholdを下げた。これは前作の約束の彼方(CUE-JIT Remix)でもやったやつだが,やっぱりEDMはドロップの音量がでかいほど(ビルドアップまでの音量と差が大きいほど)最高になる。Aiobahnのここにいるとか特に露骨だが,色んなEDMを聴いていてそういう意識を感じる。

あとOTTは神だがOTTは音量喰うのでかけた後のカッティングはちゃんとしないといけない。SoundGoodizerはあんまり音量喰わないので特にリードシンセとかに使える気がする。

 

ハイハット

ハイハットはCymanticsのmothershipうんたら3種類にお世話になった。落としたサンプルパックをサーフィンしていてたまたま見つけた音なのだがめちゃくちゃ抜けが良くて感激した。こういうのが欲しかったんやワシは。今までなかなかハイハットで良い音が出せず悲しかったのが一気に解決した。今後はこればっか重用する気がする。ハイハットは24分でシャッフルしてベロシティで強弱を弄って自然な感じにした。

 

【プラック】

個人的お気に入りポイントとしてdropに入る前のプラック2種類がある。単音でなってるやつはkors_kさんが配布していたsylenth1のプリセットバンクのinsane techniquesのプラックを使った。のっぺりプレーンな音だけどリバーブかけてcutoffを広げていくとすごく味のある音になった。やっぱりプロの作る音は凄い。あとスタックっぽい和音で鳴ってるプラックはネットの海から拾ってきたプリセットバンクのプリセットから自作した。こういう広げていく系は元の音が大事なのでプラックを目掛けて音をつくるのではなく元の音から選んでプラックをつくる意識が大事そうだと思う。

 

【リード】

リードシンセはうねりを大事にした。具体的にはピッチベンドを多用した。特にSnail's HouseやDAの曲を聴いてると顕著だが,リードシンセのうねりがグルーヴ感やエモさを生むので大事にしたい。

あとは裏でプラックで同じメロディを鳴らした。ただしこっちは装飾音符多めにした。装飾音符はあるとないとでシャレオツ感がまるで全然変わるので大事にしたい。Taku Inoueのクレイジークレイジーなんか開幕の8小節で一体いくらの装飾音符があることやら。

 

 

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(2020.9.12 追記)

なんとMKさんからこの曲のFeedbackを頂いてしまった…!

https://youtu.be/UF1PpRxrydw

 

before/afterを聴くと低音域の存在感の差が歴然。プロのミックスの凄さを改めて感じた。

MKさんから頂いた具体的なアドバイスとしては,全体として重心が高いかもという指摘。この曲のドロップ,プロの曲と比べると何かダイナミズムが足りない気がしていて,拙いマスタリングに問題があるのでは?と考えていたけど,「ミックスちゃんとすればマスタリングは音圧上げくらい」「EDMのダイナミズムは低音から来ると考えている」という意見を頂いてなるほど〜〜となった。やっぱりプロはこの辺りの低音への嗅覚(というか聴覚?)がすごい。

低音の処理については,キックがだいぶ自分の中でおざなりになっていることにはっと気付かされた。これまでベースやサブベースのローエンド,あるいはそれらとキックとの棲み分けばかりを気にして,キック自体の低音域の鳴りやトランジェントについてはあんまり真剣に向き合っていなかった。

あと印象深かったのが,サチュレーター系プラグインの効果が凄い。自分はこれまであまりサチュレーターを使ったことがなく,何となく挿して何となく太くなったような感じになって満足するようなレベルだったので,これからは真剣にサチュレーションに向き合って色々と研究してみたいと思った(Saturnほしい)。

他にも色々と勉強になることだらけでやばい(他の人の曲へのFeedbackもめちゃくちゃ面白い)ので,これを一つの教材として色々試していきたい。