台湾旅行記(19/03/14-17)鉄道の旅

2019年3月上旬に,台湾を旅行してきた。

台湾を訪れるのは今回で3回目である。1回目は台鉄で台湾を時計回りに一周し,2回目は各地の温泉と最南端の墾丁をめぐった。今回,3回目の主目的は以下の2点であった。

莒光616次への乗車

・集集線完乗

莒光616次は,樹林23:50始発,台東5:52着の下り夜行列車であり,毎週金曜日に1本だけ運行される。上りにも台東23:05始発,台東5:00着の莒光6615次があり,毎週日曜日に1本だけ運行される。台鉄で現存する夜行列車は2019年3月現在これら2つの莒光のみであり,週に1往復しか走っていない。ちなみに夜行列車といっても寝台列車ではなく,旅客は通常の莒光号の座席で眠ることになる。

今回は夜行列車莒光616次への乗車が最大の目的であり,この列車に合わせて旅程を組んだ。切符は乗車予定日の1ヶ月前にオンライン予約し,クレジットカードで決済した。一般に東部幹線の対号列車はすぐ満席となるため,念の為予約解禁と共に速攻で予約したわけである。

なお,本記事では國字標準字體(いわゆる「繁体字」)を全て日本の新字体に改めている。また,この記事は未完である。

 

1日目 2019.3.14(木) 台南

 

昼過ぎに高雄国際空港に到着し,現地通貨への両替と現地SIMの購入,及び悠遊卡へのチャージを済ませた。高雄国際空港を利用するのは今回が初めてだったが,桃園国際空港より不便だと感じた点は特段なかった*1。今回の旅行日程中では特に旧正月などの大きな祝日もないため,莒光616次以外の対合列車では基本的に悠遊卡による自願無座を利用することにし,これを念頭に悠遊卡へのチャージ額をNTD3000(JPY10840相当)と大きめにした。

高雄国際空港から高雄捷運(高雄メトロ)に乗り台鉄高雄駅へ向かい,莒光616次の切符を取票した。高雄駅は去年夏訪れた時から一変してすっかり地下化され,地上部分には何も残っておらず,一抹の寂しさがあった。

高雄駅から適当に入ってきた自強号で台南に向かった。台南は今までの台湾旅行で素通りしてきた街であり,台湾の中でも特に長い歴史を持つこの街を一度観光してみたかったため,この日の宿は台南に取り,半日ほど台南を観光することにした。

台南には15:16頃到着した。まずはバスで観夕平台方面へ向かうことにした。台南駅の表側(西側)には環状ロータリーがあり,道路を挟んで北站及び南站の2つのバス停があった。バス停には次から次へとバスがやってきており,客は乗りたいバスがやって来るなり他の停車中のバスを潜り抜けてバスに乗り込み,そのままバスはさっさと発車していった。自分の乗りたいバスが来たかどうかを常に見張っておかねば,おそらく一生目的のバスに乗れなさそうであった。

バス停の係員に訊ね,観夕平台に向かうバス88路は南站から発車することを確認し,果たして定刻通りにバスがやって来たのでこれに乗車した。88路は非常に複雑な経路でジグザグに迂回しながら西方の沿岸部へと走っていった。途中,神農街という有名な観光路地にも停車し,ここで客が大勢乗車してきた。台南駅前では私の他に観光客と思しき客が2名乗っているだけだった車内は,沿岸部に近付くにつれほぼ満員になっていった。

このまま終着まで乗れば観夕平台に行けるわけだが,私は沿岸部に浮かぶ別の島である漁光島に行きたかったので,途中の林黙娘公園で下車した。そこから二鯤鯓砲台を掠めつつ漁光島まで歩いて移動した。漁光大橋を渡り切った突き当りに「漁港島三鯤鯓」と書かれた巨大な板が出現し,その隣に海浜部へ抜けられると思しき小逕があった。ここを進むと予想通り海浜部へ抜けた。

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海浜部へ着くなり景色に圧倒された。彎曲した砂浜の遠くに日落塔があり,洋上にまさに落ちようとしている太陽と見事に調和し,絵に描いたような芸術的な光景を醸出していた。砂浜には多くの親子連れやカップルがおり,各人夕陽に照らされた海を楽しんでいた。3月でも海に入っている人がいたのは流石南国といったところである。

砂浜には野良犬が群れで臥していたりなどの光景もあった。林黙娘公園から歩いてきた時にも野良犬をよく見かけた点は気になっていたが,このあたり安平一帯は野犬が多いのだろうか。

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日落塔に近付いてみた。もはや幻想的な光景ですらあった。現地の説明板によると,日落塔は2013年よりイギリス人の芸術家Hugoによって作られた芸術作品であり,廃棄されたカキ小屋("蚵棚"とあった)の竹材を再利用したものだそうである。

 

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当初はこの後観夕平台や安平灯塔にも行くつもりだったが,予定を変更し日が沈む直前までここで夕陽を眺めることにした。

完全に夕陽が沈む直前に漁光島を出て,台南市街地へ戻れるバス停まで歩いた。台南のバス停では系統別にあと何分後にバスがやってくるかが表示されていたので非常に便利だった。なお,バス停でなくても公式サイト(http://tainanbus.info/)の路線資訊でバスがどのバス停間を走行しているかをリアルタイムで確認することができる。

バスが来るまで時間があったので,安平定情碼頭徳陽艦園区に行った。

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 この船は2005年に退役したアメリカ製の駆逐艦「徳陽」であり,船内を自由に見学できるようになっている。黒松沙士を啜りながら,嘗て台湾海峡の防衛任務に就いていた徳陽を眺めていた。

「億戴金城、徳陽艦」から88路に乗り,台南中心市街地まで戻った。小西門で下車し,夜市の開かれている保安路へ行くことにした。保安路への道中,「台南地区空気品質指標」という電光掲示板があり,この日の台南は"敏感族不健康"とあって,黄砂の為かあまり空気がよろしくないようだった。日本では花粉が猛威をふるっている時季であり,どちらが良いとは一概にいえない。念の為,夜市では加熱された食品のみ食べることにした。

保安路に着くと,美味そうで庶民的な店が軒を連ねていた。牛肉湯や蝦仁肉圓の店が非常に多いのはやはり台南という感じがした。残念ながら私は海老やミディアム肉があまり好きではないので,これらの特産品を食べはしなかったが。代わりに入った店で鶏肉飯を注文した。魯肉飯は今まで幾度となく喰ってきたが,鶏肉飯は今回が初めてだった。出てきたのは鶏肉の胸肉がご飯に載っているだけの代物で,特別美味くもなく不味くもなかった。しかし翌朝はおそらくこれの為に腹を壊した。そんなことなら牛肉湯を食べればよかったと幾許の後悔を禁じえないのであった。

保安路には南廠保安宮という寺院があり,地元の方が何人かお参りしていた。保安路で晩飯を食べた後,神農路の方までぐるりと散歩したが,街の至る所にこうした寺院や旧蹟が残っており,台南という街の歴史の長さが感じられた。夜の神農路は夕方バスの車窓からちらっと見た時の印象とはかなり違った感じで,奥に行くほどひたすら暗い路地になっていった。

 

2日目 2019.3.15 集集線,彰化

 

小西門近くの宿から藍幹線で台南駅まで戻った。台南にはメトロがなく,台南駅と台南各地への公共輸送はバスのみである。台南観光の際はまず初めに台南駅前のバス停にある路線図を写真に撮っておくことをお勧めする。

台南駅の統一超商(セブンイレブン)で咖哩鶏焗飯を朝飯として買った。これは鷄肉の入ったカレードリアで,とても美味かった。CoCo壱番屋と統一超商が提携した商品のようだが,残念ながら日本では売られていない。

これから集集線に乗る為,適当に入線してきた莒光に自願無座し,縦貫線との分岐駅である二水へ向かった。途中,曽分渓では本線の西寄りに旧線と思しき廃鉄道橋が見えた。

二水には10:10頃に到着した。10:40発の車埕行き区間車が来るまで二水を散歩することにした。

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駅を右に出て北西方向に暫く歩くと,機関車や戦闘機が展示された公園が出現した。現地の案内板によると,右手のCT278号は日本製の蒸気機関車で,縦貫線の快速列車の第一輌であり,"蒸汽女王"と称されたそうである。また,左手の台糖345号はベルギー製の蒸気機関車であり,軌間762mmのナローゲージ標準軌1435mmの凡そ半分であることから"五分仔"と呼ばれる)を走った。並べてみると,その大小がよくわかる。同案内板によると,彰化・二水間の開発発展には鉄道が密接に関係しており,特に二水では日本時代には縦貫線、集集線、台糖線の3つの鉄道が街をひっきりなしに往来していた為,二水の人々は旧い蒸気機関車に対して捨てがたい懐古の情を覚えるそうである。

 

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公園傍の踏切を渡ると,このような長閑な場所に出た。二水から集集方面にサイクリングロードが整備されているようで,実際に自転車で走っている人々をよく見かけた。この辺りを自転車で走るのも気持ちよさそうであった。

 

二水駅に戻り,入線してきたDR1000型気動車に乗って,集集線の終点である車埕へ向かった。集集の辺りまで,車窓からは椰子と思しき木が林立し,砂糖黍畑と思しき畑地が広がっているのが見えた。進行方向右側の車窓遠くには濁水渓が見えた。

水里を超えると,列車は谷間に入って行った。

軌間1067mmの線路と,その脇の椰子の木。台湾独特の光景である。斯くして二水から50分,終点の車埕に到着した。

 

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 台湾の気動車は色遣い・デザインが良い。山林の緑に一際映える。

 

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車埕駅からの風景にまず目を奪われた。嘗てこの地で盛んだった林業を支えた木材輸送用線路がそのまま残されており,この線路の上を自由に歩くことができた。遠くには水里渓が削ったと思しき急峻な谷と,そこに挟まれた明潭発電所が見えた。

 

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構内に残る腕木式信号機。左手にはS300型ディーゼル機関車が見えている。他にも長物車や家畜車など,特色ある色々な車輛が構内に保存されていた。

周辺を散歩した後,貯木池に向かった。車埕では1960~70年代にかけて林業が隆盛した。丹大から車埕まで運ばれてきた木材が貯木池に貯蔵され,選ばれた原木が吊り上げられて荷車で加工工場まで運ばれ,加工後貨車に載せられ輸出された。

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奥に原木を吊り上げる二基のクレーンが見えている。

 

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貯木池に沿って遊歩道が整備されていた。明媚だった。

 

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先程の2台のクレーンの向かい側に,またクレーンがあった。貯木場から選別され先程のクレーンによって吊り上げられ荷車に載せられた原木を,加工工場に降ろすためのクレーンである。レールも残っており趣深いが,このレールが林業隆盛時代に使われていた実物なのかは不明である。

 

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木橋と枕木が美しい。

 

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写真奥の巨大な建物が元加工工場で,現在は南投車埕木業展示館となっている。ここにもレールが残っていた。

 

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木業展示館(元加工工場)から貯木池の方面を臨む。この展示館自体が伝統的な木造建築だった。

 

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木材加工工程と配線図。

 

車埕はそこら中に林業隆盛時代のレールが残されており,廃線跡巡りを趣味とする私にとっては非常に面白い場所だった。特色ある車輛や鉄道施設も保存されているので,鉄道好きには是非お勧めしたい場所である。また車埕は風光明媚な山中にあり,周りの景色も素晴らしいので,鉄道に興味がなくとも充分楽しめる場所だろう。

 

車埕を後にし,行きの車窓から見えた斜塔が気になったので,その最寄りの濁水へ向かうことにした。

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スタフ(通票)。車埕側には運転席の横に前面窓すぐの特等席が用意されていた。

 

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徐行標識はJRと同様のようだった。

 

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右手の道路をサイクリングしている人達が多く見容けられた。

 

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龍泉。この駅の西側で中興二号特種支線という貨物線が北方へ分岐し,陸軍兵工整備発展センターへ続いている。

車埕から30分程で濁水に到着した。車埕で悠遊卡のタッチを忘れてしまったので,駅員に説明して現金で運賃を支払った。車埕はホームと駅舎が相当離れており,ついつい悠遊卡のタッチをし忘れてしまいがちになると思われるので,注意を要する。

 

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「濁水鉄道文化園区」という標識やこういったモニュメントがあったが,少なくとも駅前には鉄道文化の隆盛を感じられるようなものは何もなかった。

濁水駅から集集線の沿道を車埕方面に歩き,行きの車窓で気になった斜塔を見に行くことにした。

 

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集集線沿道。何の畑かわからないが,日本(本州)だとまず見ないような光景だろう。この写真の中央奥に目的の斜塔が見えている。

 

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斜塔の北側から。写真左の鉄塔が他の鉄塔より大きく斜めに傾いていることがわかる。この鉄塔は,1999年9月21日に発生した921大地震により傾いたものである。921大地震は集集鎮を震源とする巨大地震であり,この辺り一帯は大きな被害を受けた。この鉄塔は震災遺構の一つである。

 

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921大地震は集集線にも潰滅的な影響を与えた。このレールは921大地震によりぐちゃぐちゃに歪んだ当時の集集線のレールである。この一帯は現在の集集線の線路に並行して歪んだレールも保存されていた。集集線は総路線長29.7kmの比較的短い路線だが,復旧に実に2年6ヶ月もの月日を要している。

 

斜塔近くのコンビニで買った黒松沙士を啜りながら濁水駅まで散歩した。昼間の名間夜市は大陸の田舎の市場を想起させる雰囲気だった。

この日の深夜に台北から夜行莒光に乗車する。濁水からまず彰化まで北上することにした。濁水から二水まで移動し,区間車に乗り継ぎ彰化へ向かった。

彰化駅ホームで売られていた"喜楽紅豆餅"が美味しそうだったので一つ購入した。見た目は完全に日本の廻転焼だったが,生地が廻転焼より硬く,非常に美味しかった。

彰化には現役の扇形車庫があり,今回これが目的で彰化に来たが,営業時間外で見学できなかった。次回また訪れることにした。

 

 

腹が減ったので,北門肉円という老舗で肉円を食べた。辛過ぎず甘過ぎず絶妙に味付けされたとろみのあるスープの中に肉円が入っており,碗の中の全てが調和した最高の一杯だった。

 

 

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駅前を散策していると,頂好葱抓餅という屋台があった。美味しそうだったので,原味の葱抓餅を注文した。色々なところで葱抓餅を食べてきたが,ここの葱抓餅はかなり美味しかったと思う。しっとり系ではなく,割とサクサクした食感だった。

彰化で口にした3品がどれも美味かったので,私の中の彰化のイメージが美食の街として固定されてしまった。

 

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国定古蹟の彰化孔子廟

 

台湾では多くの地域でバイクが発達しているのだが,彰化ではシェア自転車も発達しているようで,バイク乗りと同数くらい大勢の人達がシェアサイクルに乗って移動していた。

 

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彰化からは適当に入線してきた自強号に自願無座して台北へ向かった。列車は21時頃台北に到着した。莒光616次の発車まであと3時間弱あったが,この日はよく歩いた為足が疲れていたので,晩飯を食べて充電スポットで大人しくすることにした。

前回の旅行で美味しかった台北駅南側の飯糰屋に向かったが,閉店していた。では台鉄便当を喰おうかと思ったが,既に営業時間外だった。結局統一超商でまた咖哩鶏焗飯を買って食べた。やはりこれはおいしいので,日本でも売ってほしいと切に思った。

台鉄の駅にはよく充電スポットが用意されており,大変便利である。三貂嶺駅のような辺鄙な駅にすらも充電スポットがある。台北駅構内案内図から充電スポットを探し,改札内の充電スポットで列車を待つことにした。

しかし改札機が鳴ってしまった。駅員に何時から入れるのか質問したものの,駅員の華語が聴き取れず窮していたところを,通りがかった現地の青年に助けられた。ありがたいことだった。こういう優しさに接すると,自分もそうありたいと思うようになる。

駅員は私を改札内に入ってよいと言っていたそうだった。しかしなぜ改札機が鳴るのかは青年にもわからないようだった。台鉄の入場時間が列車発車時間の一定時間以上前だと鳴るのかもしれないし,列車発車日でないと入場できないのかもしれない。この点は検証を要する。

 

3日目 2019.3.16 台北→高雄

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時は来た。

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 莒光616次,台東行きは台北駅へ定刻に入線してきた。

 

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車内は至って普通の莒光号である。この椅子が本日の寝床である。通常の座席ではあるが,シートピッチが広い上に足掛けもあり,それなりに快適ではあった。寝ている客に配慮してか車掌による放送は一切なかったが,駅到着時の自動放送は流れた。照明は点きっぱなしで,アイマスクを用意していた乗客もいた。

台北出発時点でほぼ満席であったが,その後の停車駅でも次々に客が乗り込んできた。台東までの停車駅は樹林、板橋、万華、台北、松山、汐止、七堵、瑞芳、宜蘭、羅東、南澳、新城、花蓮、吉安、志学、寿豊、鳳林、光復、瑞穂、玉里、池上、関山、鹿野、台東であった*2。途中の花蓮で半分くらいが降りて行った。

 

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 翌朝5:52,莒光616次はほぼ定刻通りに台東へ到着した。仄かに明るい台東の空と,莒光616次。

台東からは都合よく6:00発の自強302次新左営行きが存在し,莒光616次から乗り継ぐことで一夜にして台北→高雄を移動することができる。台北から5時間半程度しか眠れておらずかなり眠かったが,乗り換え時間8分の間に一旦駅を出て,悠遊卡で再び戻ってきた。

自強302次は台東出発時点では半々程度の乗車率であったが,次第に乗客は増え,屏東ではもう殆ど空き席がないような状況だった。朝一番の列車でこの乗車率なので,東部幹線の対合列車の混雑率を改めて感じた。

 

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車窓からは台湾東海岸と昇る太陽が見えた。夜明けの列車から見る日の出はただひたすらに美しかった。

この日はまず橋頭にある台湾糖業博物館に行くことにした。目的は"五分車之旅"で五分車のトロッコに乗ることであった。途中で自強302次から区間車に乗り換え,橋頭には9:30頃に到着した。橋頭駅から台湾糖業博物館までは徒歩で10分程度であった。道中立ち寄った橋頭老街の雰囲気がとても良かった。

 

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台湾糖業博物館に到着するなり,軌間762mmの廃線路が私を出迎えた。レールの錆び具合等からして実際に五分車が走っていた実物だろう。

目的の五分車トロッコはこの博物館から花卉中心まで土日祝の10:30~16:30の1時間おき(12:30を除く)に出ている。運賃は往復100元である。9:40頃に受付に行ったがまだ閉まっていたので,10:30の発車まで敷地内を取り敢えずぶらつくことにした。

糖業博物館の敷地は広大で,旧橋頭糖廠の工場跡から台糖製品の売店,イベント場まであった。まず台糖製品の売店に向かい,アイスクリームを頂くことにした。

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夜行列車明けの身体にアイスクリームが沁みた。中身はかなり大量に入っていた。

アイスクリームを頂いた後,敷地内を散策した。

 

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 このようにそこら中に五分車が静置されていた。昂奮を禁じえない壮観だった。レールもその殆どが嘗てのまま残されているように見えた。

10:15頃に五分車之旅の受付に戻り,切符を買ってトロッコに乗車した。

 

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 五分車トロッコを索引する汽車(捷運駅側)。

 

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 トロッコ列車は10:30に定刻通り出発し,時折索引機関車が物凄い汽笛をあげながら,およそ15km/h前後くらいの速度でゆっくり進んで行った。トロッコには恐らくサスペンションなどはなく,あまり保線されていなさそうな軌道の凹凸が直に振動となって伝わった。嘗ての糖鉄もこのような感じだったのだろうか。周りの風景は長閑な畑だったが,高雄メトロの高架線だけが対照的に近未来的な雰囲気だった。

 

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索引機関車(農園駅側)。トロッコ列車は捷運駅(博物館)から10分程度で終点の農園駅に到着した。20分後に折り返し11:00に捷運駅方面へ発車する。

花卉農園センターにはバーベキュー場などが附設されているようだった。近くのコンビニで黒松沙士を買って啜りながら散歩した。夜行列車明けの沙士は格別に体に沁みた。夜行列車明けに口にしたものは何でもうまいのかも知れない。

 

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農園駅には蒸気機関車が静置されていた。

 

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軌道上に草が遠慮なく生い茂っていた。

折り返し11:00発の捷運行きトロッコ列車に乗車し博物館へ戻った。

 

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右手の高架橋は高雄メトロである。糖鉄の線路の左側には台鉄の線路が並行している。

正直,10分といわずもっと乗っていたかったが,往時の糖鉄の雰囲気は感じ取ることができた。

 

駅を出て,敷地内を引続き散策しつつ橋頭糖廠工場跡へ向かうことにした。

 

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このように敷地内には至るところに軌間762mmの線路が伸び,五分車が静置されていた。壮観であった。

 

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"五分車修理室"の中に,エンジン部が剝き出しの機関車が静置されていた。内部構造を間近で観察することができる。

 

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"五分車修理室"には多種多様な五分車が静置されていた。

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幾線にも及ぶ軌間762mmの線路。往時はこの線路を五分車が忙しなく往来したのだろう。左手の高架橋は高雄メトロである。

 

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木々の間にぽつんと取り残された五分車機関車。

 

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橋頭糖廠の入口部。ここで貨車に載せられた砂糖黍が降ろされ奥の工場に送られた。

 

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 工場内部。ローラーのようなものが圧搾機である。この工場で様々な工程を経て砂糖黍から砂糖を生産していた。

 

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圧搾して得た砂糖黍の汁を蒸発させる巨大なタンク。

 

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 一階部はかなり薄暗かった。

 

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 赤い謎の粉。野良犬がいたりして心臓に悪かった。写真は明るいが,実際はもっと薄暗かった。

 

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先程の圧搾機の下部にあたる。ここを奥に進むと鍋炉室に出た。

 

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鍋炉室はあまりに巨大で写真に収まらなかった。

 

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工場の外から。

工場を出て,糖業歴史館へ向かった。糖鉄に関する面白い展示があったので,ここに紹介する。

 

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戦時中,第二の縦貫線として戦略的に糖鉄が南北に繋がれたが,戦後徐々に姿を消してしまったという展示。

 

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 往時の糖鉄の姿が写真付きで説明されていた。これらの他にも糖鉄に関する興味深い展示があった。

全体として,台湾糖業博物館は鉄道廃墟も工場廃墟も非常に面白かった。鉄道好きには是非お勧めしたい場所であった。地下隧道と防空壕など,戦時の施設も残されていた。

 

糖業博物館を後にし,高雄メトロで西子湾へ向かった。橋頭糖廠駅の自販機で地味に探し続けていた缶の加塩沙士を発見した。普通の沙士より好きな味だった。

 

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高雄メトロは左営にかけて長い間高架橋の上を走った。辺り一帯がほぼ畑地で,かつ高架橋がかなり高い造りの為,車窓からの風景は独特なものだった。

美麗島で乗り換えて西子湾に到着後,旗津に向かうフェリー乗り場まで歩いた。

 

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西子湾駅を出て直ぐ,このような公園に出る。ここは哈瑪星鉄道文化園区といい,台鉄高雄港駅の廃線跡を公園として整備した場所である。一面に複雑な配線の線路が拡がっており,レールや転轍機,様々な車輛がそのまま残されている。私が高雄で一番好きな場所である。高雄港駅廃止後,大規模な開発計画もあったが,保存運動等の様々な経緯があって*3このように綺麗に残されている。

 

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人が乗れるミニチュア列車。なぜかN700系,しかものぞみ号高雄行きだった。

 

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旧臨港線の線路を活用し,高雄LRTが走っている。現在は哈瑪星⇄籬仔内で走っているが(第一段階),将来的には高雄機廠から北部地域を経て哈瑪星まで繋がり大きな環状線を形成することになっている(第二段階)。

 

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西子湾駅から南西方向に暫く歩き,鼓山フェリーポートに到着した。ここから旗津へ向かうフェリーはひっきりなしに発着していた。船が来る度,物凄い量のバイクが出て行った。

このフェリーは悠遊卡が使えた。かなり長い行列が出来ていたが,ひっきりなしに船が来るため廻転率は高く,案外すんなり乗船することができた。

 

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 船からは旗後山にたつ高雄灯台,海軍基地に着眼していた軍艦など,高雄港を一望できた。高雄港は漁船,個人のレジャー船,漁船,軍艦,液化天然ガス輸送船,フェリーなど,様々な船が行き交っていた。

 旗津フェリーポートに到着後,売店でお茶を購入して旗後山を暫く登り,高雄灯台を目指した。

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急峻な旗後山の上に建っている為,塔長は短い。主塔は八角形になっている。

 

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山上ゆえ,周りの眺めも良かった。暫くここで高雄港を眺めながら休息をとることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:但し,中華電信でクレジットカードによる決済が非対応だった。

*2:同じ種別の対合列車でも停車駅は異なり得る。例えば,莒光82次は松山を出ると花蓮まで停まらない。

*3:≪從臨港線到水岸輕軌道≫を参照のこと。

台湾旅行記(18/09/23-27)北投温泉、墾丁他

2018年9月23日から27日までの5日間で、台湾を旅行してきました。前回は台鉄で時計廻りに台湾を一周しましたが、今回は温泉(北投温泉・四重渓温泉)と、台湾最南端・墾丁に行って来ました。

出発時点では墾丁周辺の日本語の情報がまだまだ少ない様に感じたので、今後行かれる方の参考になればと思います。

 

※この記事は未完です。また墾丁周辺の日本語の情報については,最近になって地球の歩き方高雄編が出版されました。

 

一日目 9月23日

昼過ぎに桃園空港着。入国カードは事前にネット上で済ませておくことで機内で書く必要がなくなります*1

入国検査前にネット周りと現地通貨の調達をします。中華電信のカウンターで4G無制限5日間SIMを300元で契約。前回の台湾旅行でモバイルwifiの電池保ちと物理的な大きさに辟易していたので、今回は現地でSIM購入。3日前までなら日本からネット予約もできるようです*2 。日本でwifiルーターを借りるより安いし、台湾での電話番号が手に入るのは大きな利点なので(後述)、PCを持って行くとかSIMフリーじゃないとかでもない限りは現地SIMが正解かなと思います。クレカ支払もできます。

続いて両替。日本で両替するより圧倒的に現地の方がレートは良いです。参考までに、出発時点で関空出国エリアでのレートが4.02円/元、学割レート4.01円/元だったのに対し、台湾でのレートは3.80円/元でした。

 

入国後、まずは悠遊カードを入手するため、コンビニを探しました。悠遊カード(プリペイドICカード)は前回の台湾旅行では使わなかったのですが、想像以上に使える範囲が広く、全国のコンビニ(ファミマ、セブイレ)、MRT、台鉄*3、バスなどありとあらゆる場面で使えるようです*4。しかも割引が結構あって(台北捷運2割引、台鉄1割引など)非常にお得です。特にバスでは小銭の支払にもたついたりして色々めんどくさい時があるので重宝するかと思います。

空港で中々コンビニが見つかりませんでしたが、到着ホールの地下にありました。無事入手。初期チャージは1000元にしてみました。

 

入国審査及び現地SIM・現地通貨・悠遊カードの入手という一連の流れを終らせたところで、この日の目的地・北投温泉に向かいます。北投温泉までは台北から台北捷運で行けるので、取り敢えず空港から台北の市街地へ出ます。前回は桃園捷運を使ったので今回は国光客運のバスを使ってみることにしました。

先程のコンビニと同じ階層(到着ホールの地下)に、桃園空港発着のバスがずらっと並んでいました。国光客運のカウンターの人に出発するバス停の番号を訊いて、バスに乗ります。悠遊カードでバスに乗る時、タッチするのは乗車時(上車刷)なのか下車時(下車刷)なのか将又両方なのかは予め確認しておく必要があります。バス停か読取機かどっかに書いてるはずなので、そこは見逃さないようにします。書いて無ければ運転手に聞くと確実かと思います。このバスは乗下車タッチ式でした。運賃は130元。桃園捷運で台北駅まで出るより20元安いです。

バスには無料Wifiに加えて各座席にUSBポートがついており、乗り心地も非常に快適でした。日本の空港バスではあまりUSBポートやコンセントを装着したバスは多くないと思うので、こういうサービスは日本でも是非導入して欲しいところ。

 

桃園空港を出発後暫くして台北の市街地に入りました。途中俄かに大雨が降ってきたので天気が心配でしたが、市街に入った時には止んでいました。

このバスは台北駅が終点ですが、どうせこの後台北捷運淡水信義線で北上するので、GoogleMapで現在位置を確認しながら良さげなところで途中下車しました。下車時は下車鈴を押します。

 

降りたところから圓山駅まで歩いて淡水信義線で北上。北投駅で新北投支線に乗り換え新北投駅に到着。新北投支線はめちゃくちゃのろのろ運転で面白かったです。

 

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駅を出るなり温泉街の雰囲気がありました。まずは地熱谷に向かいます。

外国の温泉に来るのは初めてなので、やや昂奮しました。異世界の温泉街みたいな感覚。…アルカンレティアかな?

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どうやらここは熱海だったらしい。

 

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10分程度歩いて地熱谷に到着。ここら一帯の北投温泉の泉源の一つです。地熱谷の水温は場所によっては90℃に達するようです。水面から白い蒸気が絶え間なく上って来る様子は見ていて厭きませんでしたが、ただでさえ真夏の雨上がりでクソ暑いのに地熱谷からの蒸気が相俟って耐え難い溽暑になっており、流石に長居はできませんでした。

 

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この地熱谷から新北投駅の方面へ温泉の川が流れています。とても綺麗でした。

 

さて早速北投温泉に入ります。地熱谷の傍の『景泉浴室』という古惚けた温泉館に入ってみました。

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事前のリサーチでわかっていましたが、ここは個室温泉というユニークな入湯スタイルがあって、個室で自分の好みの温度で自分だけの湯を楽しむことができます。料金は40分150元。

 

金を払って個室へ。非常に蒸し暑い。換気が追いついていませんでした。そして浴槽を見ると、想像以上に年季が入っていてビビりました。但し見た目はやばくても最低限の清掃はされているようでした。

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着替えながら早速お湯をジャブジャブ入れていきます。着替えの時間も考えると、ゆっくり浸かるには結構ジャブジャブ入れていかないとダメですね。

赤の蛇口から温泉が、青の蛇口から冷水が出るので、これで温度を調節します。私は熱めの温泉が好きなので(谷地頭温泉とか)、かなり熱めにしました。

お湯を入れながら、地熱谷の熱気に蒸されて汗びっしょびしょになった衣類を脱ぎつつ浴槽を掻き混ぜます。

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お湯が張ったらいざ入湯。

…調子に乗って熱くし過ぎました。冷水を入れて再入湯。

これは非常に気持ちいいです。素晴らしい。予想外にもはまりそうでした。ずっと浸かっていられそうでした。恐らく湯の温度を自分好みにできるという点が非常に大きいと思います。

 

着替えて次の温泉浴場へ。近くに同じく地熱谷を源泉とする公衆浴場『千禧湯』があるのでそちらに向かいました。

台湾では温泉といえば男女混浴のところが殆どで、家族でわいわいやるプールのような感覚のようです。男女混浴の温泉では水着の着用が義務付けられています。

 

すぐ近くなので、個室温泉で水着に履き替えてそのまま行きました。

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 …そしてこれが裏目に出ました。公衆温泉の入場料40元を払い、いざ進入といったところでゲートのおばちゃんに止められました。日本のプールに行く時の感覚で予め水着を着込んでいくスタイルは、台湾ではダメだったようです。まあ衛生面から水泳帽着用を義務付ける温泉が多い台湾の事、外でどこを歩いたかもわからぬ水着を着てそのまま入湯など言語道断だったのかも。これは少し反省すべき点でした。

ゲートのおばさんに「ここでも水着売ってるから新しく買って下さい。」と言われましたが、250元はちょっと高い気が…。やむなく退散。台北からMRTですぐ来れるのでまたリベンジしましょう。勉強になりました。

 

北投温泉に浸かるというこの日の目的は果たしましたが、気の赴くままに、名は知っているがまだ行ったことがない台北101に行ってみることにしました。お目当ては巻き上げ速度60.6km/hで嘗てギネス世界記録を誇っためちゃくちゃ速いエレベーター。

北投からMRTで一本、台北101/世貿駅で下車し、5階の受付で入場料を払い、エレベーター待ちの列に並びます。入場料は結構高かったです。例のエレベーターが2基しかないので、中々列が進みませんでした。加えてこの日は日曜日だったので、人でごった返していました。

待ち列の途中で強制的に記念写真コーナーが出現。無理やりポーズをとらされ、撮られた写真は写真コーナーの少し先の画面で問答無用に表示されていきます。この強制的な記念写真は、希望すれば91階で買えるようです。

 

列は少しずつ進んで、漸くギネスエスカレーターのお出まし。いざ乗ります。

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入口横の画面に現在の階層が表示されますが、目を疑う速さで数字があがっていきました。やがて減速と共に浮き上がるような慣性力を感じ、「余熱」的な感じでさらっと10階くらい上がりました。やばい。5階から一瞬で89階展望台につきました。

速すぎてよくわからんかったというのが正直なところですが、こんなに速く巻き上げておいて安定性や乗り心地が全然悪くないのは本当に凄いですね。

 

この日の台北は一時雨だったせいか、窓ガラスが曇ってしまっている方角が屡々ありました。折角の展望台なのだから曇り止めみたいな機能は備え付けて欲しいです。

しかし見える方角の夜景は本当に綺麗でした。夜景は光の色遣いや都市開発の仕方、構造物など、その土地固有の様相を反映するように思うので、私は好きです。以前昆明から済南に飛んだ際、済南の真っ赤な光に満ちた夜景(まだ日没前でしたが)が印象的だったのですが、こうしてみると本当に街ごとに全然違います。

 

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北方向。全体的に台北の夜景は光が柔和な印象ですが、その分手前のごつい光をした奇抜な建物が目立ちます。遠くに美麗華魔天輪(観覧車)が見えています。

…切実に一眼レフが欲しい。

 

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 こちらは東方向。ユニナノダイアみたいなビル。縁取りの光が美しいです。

Dirty AndroidsのCity Never Sleepsが脳内再生されます。

 

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91階屋上展望台から台北101の頂上を見上げる図。なかなか毒々しい(?)印象。

 

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88階から巨大な制震ダンパー。

 

帰りのエレベーターも死ぬほど混雑していましたが、係員さんに従業員用のエレベーターに案内して頂けました。さらば台北101

 

腹が減ってきたので、近くの臨江夜市に行ってみます。前回の台湾旅行で饒河街観光夜市に行きましたが、その時は物凄い人混みでした。臨江夜市もめちゃくちゃ混雑していました。狭い道路に人が一杯いて歩きにくい。美味そうな匂いに人が集まるのでしょう。

ちなみに私は高雄の六合夜市くらい広い夜市が好きです。歩きやすいとあちこち行ったり来たりしてじっくり検討できるからです。

 

夜市をぐるっと一周して目星をつけます。台湾の飯にはあまり詳しくないので、店の看板を見てもよくわからないことが多々ありますが、取り敢えず見た目で美味そうなものを食べています(そしてそれが大体うまいのが台湾のいいところ)。今回は蔥抓餅を買ってみました。

これがめっちゃくちゃうまい。こんなにうまい屋台飯があったとは。もっと早く知っておくべきでした。恐らく小麦粉で生地を作り、青蔥を絡めつつ焼いて重層的に丸めた感じでした。中に入ってるよくわからん青菜(パクチーかも)も非常に美味しかった。胡椒も見事にきいていて、素晴らしかったです。蔥抓餅の名はしっかり頭の「好呷」リストにインプットしました。

その後炒飯を食べて満腹に。蔥抓餅の刺戟と感動が強すぎたのか、炒飯はあまりパッとしませんでした。

徒歩でホテルに移動し、経典台湾ビールを啜りこの日は終了。

 

二日目 9月24日

 

この日は乗り鉄がメインです。西部幹線から飛び出る台鉄の盲腸線を乗り潰しつつ高雄へ移動します。

朝飯は宿で無料で出ましたが、台湾のおにぎり「飯糰」を食べたかったのでこれを探してウロウロ。台北駅すぐ南側で発見しました(『飯糰覇』)。味の種類が鮪とか何とか色々ありました。飯糰を一つ買って、台鉄の区間車に乗り込みます。

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物凄いボリューム。日本のおにぎりとはやはり少し違います。米の量も然ることながら、あまり日本のおにぎりじゃ見られなさそうな具が何種類もびっしりと入っている点は特に違います。何かの揚げ物、高菜、何かのフレーク(殆どわからん)。非常に美味しかったです。これ一つでかなり腹が満たされました。

 

区間車で新竹まで移動し、ここから六家線に乗り換えて六家へ。

六家駅は高鉄新竹駅との接続駅です。

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六家駅に停車中のEMU600型。

 

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六家駅周辺の街並み。建物が悉く高い。近未来的というか、不思議な街並みです。

 

これにて六家線完乗。竹中駅で内湾線に乗り換え終点内湾へ。

内湾線は非電化区間気動車の快走で昂奮します。

 

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内湾駅に停車中のDR1000型。台鉄の気動車は塗装といい顔といい本当にかっこいい。

 

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 雑草が凄いことになっていますが廃線ではありません。

 

ここから折り返しこの電車に乗って新竹に戻る予定でしたが、内湾駅周辺が面白そうな感じだったので、予定を変更して一時間後の列車に乗り、それまで内湾を散歩することにしました。

 

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 駅周辺に広がる内湾老街。活気があって非常にいいです。菫の花を使った小吃など、あまり台北などでは見たことのない屋台が並んでいます。案内板によると、客家の文化なのだそうです。

駅を出て左手に暫く歩くと、何やら吊橋が見えました。

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いいですね。ちょっと渡ってみます。

 

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きれいなんな~

 

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 揺らすな。

  

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西瓜ジュースを購入。美味しいけど種ごとジュースにしており喉ごしはイマイチ。黒い斑点の大きな西瓜ジュースは今後注意します。

 

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内湾老街の活気が凄い。

客家語らしき未知の言葉も聞こえてきました。

 

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街歩きの楽しい街です。ここは是非また来たい。

 

帰りの列車で新竹まで戻ります。内湾線の車窓、ずっと厭きません。あの辺から撮ったら綺麗だろうなあというポイントも幾つかあったので、いつかは撮り鉄したいと思います。

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富貴駅。金持ちになれそう。

 

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謎のモニュメント。

 

新竹駅に帰着。この日は集集線も乗り潰す予定でしたが、遥か南の高雄まで行きたいので、またの機会に。移動最優先でいきます。

台中にちょっと立ち寄ってみようと思ったので、悠遊カードでの乗車だと自願無座となる自強号を避け、坐れそうな次の区間車が来るまで街歩きをします。

 

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新竹駅。特徴的な駅舎です。ちなみに駅名のラテン文字表記はウェード式の"Hsinchu"です。

 

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区間車到着時刻に合わせて散歩を切り上げ駅に戻ります。

 

入線してきた区間車を見てびっくり。予想に反して超満員でした。後でその理由はわかったのですが、この時はひたすら区間車やべえとしか思えませんでした。結局立ちっぱなしで台中に到着。

ところが、台中駅に着いてさらに唖然。ホームが狭い上に出口が一箇所しかなく、満員電車から降りてきた乗客がその一箇所に集中する為、もう台北の夜市どころじゃないくらい混んでいました。全然改札まで進まん。

 

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  駅から出てみると、どうやら台中駅は高架化工事中のようでした。出口が一箇所しかないのはその為かも知れません。が、いずれにせよ全く人を捌けてないのでちょっと現状問題がありそう。

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駅前はとにかく人が多かったり物乞いが一杯いたりで渾沌としている印象でした。

 

そしてここで、台中からの対号列車が悉く満席という問題が発生。高雄まで無座はかなりまずい。代替撰択肢として、取り敢えず高雄まで行く高速バスを探し、最悪なければ高鉄を使うことにしました。

 

早速高速バスセンターへ。駅の高架化工事の影響で、駅からかなり迂回しなければなりません。

國光客運などの入ったバスセンターで、まずはカウンターの人に高雄行きのバスを確認。どうやらここから確かに出ているようでした。悠遊カードが使えると聞き、悠遊カード対応の自販機へ。

全便満席でした(終)。まじか、人多すぎんか。

 

というわけで作戦2、高鉄に切り替え。駅に戻り高鉄の切符を買おうとカウンターへ。

しかし受付の人に何やらできません的な事を言われる。案内窓口で詳しくきいてみると、高鉄台中駅は台鉄台中駅にはなく、数駅向こうの「新烏日」駅にあるため、ここでは高鉄の切符は買えないということでした。日本のみどりの窓口みたいなのを想定しているとダメみたいです。

そこで台中から新烏日までの所要時間を計算しつつ、高鉄の席を予約しようとしたところ、なんと高鉄も満席。本気でまずいことになりましたが、この時点で覚悟を決めることにしました。高雄までの4時間無座をです。

一番早く高雄に着く対号列車を狙いつつ、できるだけ座れそうな区間車も使って移動したいところ。台鉄ホームページの時刻表とにらめっこし、乗る列車の目星をつけました。この時、台中発の電車は軒並み10分以上の遅れ。まあ沿線乗客がこんなにいれば仕方ないでしょう。

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駅のホームはずっとこんな感じです。本当に人だらけ。これに加えて、区間車から出てくる満員の乗客が一つの狭いホームに合わさるわけですから、この混雑具合はもう阪神優勝時の道頓堀くらいあるのでは(生で見たことはないですが)。

 

目星をつけていた区間車があまりに満員で乗る気が失せたので、定刻発車しそうな台中始発の区間車に乗る事にしました。彰化で自強号に乗り換え、台南を過ぎたあたりでまだ坐れなければ、接続する区間車が空いてそうならそこに飛び乗る計画にしました。

 

電車は定刻通り出発。悲しい哉、結局台中は観光どころありませんでした。これから対号列車の予約はちゃんとしようという教訓を得ました。まあこの台中駅周辺および対号列車や区間車の超満員の原因は後でわかったのですが、実はこの日は中秋節だったんですね。この時日本では振替休日を入れて3連休だったのですが、台湾でも中秋節を入れた3連休になっており、この日が連休最終日だったわけです。なるほどなぁ…。

海外旅行でハプニングはよくありますが、乗り越えた後は本当に頭が疲れます。まあそれが楽しい想い出になったりするのですが。ちなみに私の過去最大のハプニングは、初海外・初乗継で北京での乗継便が突如欠航になった時です。空港の欠航表示の前に独り膝から崩れ落ちてしまいした。当時は中国語も全く喋れなかったので、同じ境遇の日本人を探し出して急遽味方につけ、本当に身振り手振りと筆談だけで何とか8時間後の便に振り替えてもらったことがあります。

 

彰化駅に到着し下車。自強号に乗り換える予定でしたが、遅れてきた海線経由の光号が入線してきたので、これに飛び乗りました。限界無座修行の開始です。

車内に入ってみると、無座の修行僧で通路まで満員。無座勢が通路側の座席を肘掛けがわりにしているせいで、通路側に坐っている人があまり人権なさそうな感じ。でも特に文句を言う人はいませんでした。自分もここから高雄まで無座の仲間入りです。

道中、ごく偶に運よく近くの椅子が空いたらば坐りを繰り返していました。かなりきつかったです。携帯パイプ椅子が欲しい。

 

途中車掌の検札がありました。台北から悠遊カードで乗った(自願無座扱いになります)ので、これを車掌の機械にタッチしました。

移動の間に明日の予定や宿を決め、列車は漸く台南に到着。台南辺りから区間車に乗り換えて坐る予定でしたが、台南で結構人が降りて空き席が一杯できたので、高雄までこのまま光に坐っていくことができました。

 

高雄着。疲れたので晩飯の前にまず宿でチェックインを済ませ、ちょっと休憩して六合夜市へ。

六合夜市は、台北の夜市と違って人が多過ぎず道路も広いので非常に歩きやすくて個人的に好きな夜市です。高雄駅から徒歩で行ける近さにあり、出店はほとんどが飲食系の屋台なので、高雄にやってきてすぐ晩飯を求めて散策するには最適です。

 

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水餃。安くてめっちゃ美味しい。こういうのは本当に台湾っぽい。

 

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綜合湯。魚丸と、肉を包んだ餅の様なものが入ったスープです。中を割ると肉汁が出て美味しいです。ちょっと薄味でした。

 

去年来た時にはなかった出店があったり、去年あった出店がなかったり、当たり前ですが出店の入れ替わりはあるようです。

 

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無座お疲れ記念。経典はやっぱりめっちゃくちゃおいしい。大阪日本橋の中国物産店で台湾ビール自体は手に入りますが、経典は手に入らないので、台湾にいる間にじっくり味わっておきます。

 

 ここで2日目終了。3日目からはいよいよ懇丁に行きます。

 

 

 

 

 

そらのおとしもの3話の宿題<数学>の略解

そらのおとしもの3話を視聴していたところ,宿題〈数学〉に微分方程式が混じっていた。
空美町では公立の中学生がこのレベルの問題を解いてしまうらしい。何という進学校,恐るべし空美中。

問題文が辛うじて判読できる3枚について,忘れかけのTEXの復習も兼ねてそれぞれ解いてみる。

常微分方程式


\begin{align}
 \frac{1}{x^2}\frac{d}{dx}\left(x^2\frac{dy}{dx}\right)=-y^n
\end{align}について,以下の問に答えよ.
ただし, y(0)=1\displaystyle\left.\frac{dy}{dx}\right|_{x=0}=0とする.

(i) n=0の場合の解を求めよ.

n=0のとき,
\begin{align}
&\frac{1}{x^2}\frac{d}{dx}\left(x^2\frac{dy}{dx}\right)=-1\\
\therefore~&\frac{1}{x^2}\left(2x\frac{dy}{dx}+x^2\frac{d^2y}{dx^2}\right)=-1\\
\therefore~&\frac{2}{x}\frac{dy}{dx}+\frac{d^2y}{dx^2}=-1\\
\therefore~&xy''+2y'=-x
\end{align}
初期条件がうまく使えそうなのでラプラス変換をしてみる.
上式の両辺をラプラス変換して,
\begin{align}
-\frac{d}{ds}\left(s^2Y-sy(0)-y'(0)\right)+2\left(sY-y(0)\right)=-\frac{1}{s^2}
\end{align}
初期条件 y(0)=1 y'(0)=0を代入して整理すると,
\begin{align}
s^2\frac{dY}{ds}=\frac{1}{s^2}-1
\end{align}
変数分離して,
\begin{align}
dY&=\left(\frac{1}{s^4}-\frac{1}{s^2}\right)ds\\
\therefore~Y&=-\frac{1}{3}\frac{1}{s^3}+\frac{1}{s}+C
\end{align}
ただしC積分定数.上式両辺を逆ラプラス変換して,
\begin{align}
y=-\frac{1}{6}x^2+1+C\delta(x)
\end{align}
ただし\delta(x)は衝撃函数.初期条件 y(0)=1よりC=0で,結局
\begin{align}
y=-\frac{1}{6}x^2+1
\end{align}
が答になる.(WolframAlphaで確認済)
衝撃函数の扱いのあたり厳密かどうかは自信がない。何かしら理学徒に怒られそう。すみません


【別解】
 \displaystyle x^2\frac{dy}{dx} =pとおくと簡単だった. n=0のとき,
\begin{align}
&\frac{dp}{dx}=-x^2 \\
\therefore ~ & p=-\frac{1}{3}x^3+C_1 \\
\end{align}
ただしC_1積分定数.ここで \displaystyle p(0)= \left. x^2\frac{dy}{dx} \right| _{x=0} = 0より,C_1=0
よって,
\begin{align}
&p=-\frac{1}{3}x^3 \\
\therefore ~ & \frac{dy}{dx}=\frac{p}{x^2}=-\frac{x}{3} \\
\therefore ~ & y=-\frac{1}{6}x^2+C_2
\end{align}
ただしC_2積分定数.ここで y(0)=1より,C_2=1
よって,求める解は
\begin{align}
y=-\frac{1}{6}x^2+1
\end{align}

(ii)y=\displaystyle\frac{z}{x}とおいて,zに対する微分方程式を導き,n=1の場合の解を求めよ.

y=\displaystyle\frac{z}{x}を与式に代入すると,
\begin{align}
& \frac{1}{x^2}\frac{d}{dx}\left(x^2\frac{d}{dx}\left(\frac{z}{x}\right)\right)=-\left(\frac{z}{x}\right)^n\\
\therefore ~ &\frac{1}{x^2}\frac{d}{dx}\left\{x^2\left(\frac{dz}{dx}\frac{1}{x}-\frac{z}{x^2}\right)\right\}=-\left(\frac{z}{x}\right)^n\\
\therefore ~ &\frac{1}{x^2}\frac{d}{dx}\left(\frac{dz}{dx}x-z\right)=-\left(\frac{z}{x}\right)^n\\
\therefore ~ &\frac{1}{x^2}\left(\frac{d^2z}{dx^2}x+\frac{dz}{dx}-\frac{dz}{dx}\right)=-\left(\frac{z}{x}\right)^n\\
\therefore ~ &\frac{1}{x}\frac{d^2z}{dx^2}=-\left(\frac{z}{x}\right)^n\\
\end{align}
を得る.ここにn=1を代入すると,
\begin{align}
\frac{d^2z}{dx^2}=-z
\end{align}
特性方程式~\rho^2=-1より,\rho=\pm iとなるので,一般解は
\begin{align}
z=C_1 \cos x+C_2 \sin x
\end{align}
とおける.ただしC_1C_2は任意定数.
ここで,
\begin{align}
z(0)&=\left.xy\right|_{x=0}=0\\
z'(0)&=\left.\frac{d(xy)}{dx}\right|_{x=0}=y(0)+0=1
\end{align}
であるから,
\begin{align}
z(0)&=C_1=0\\
z'(0)&=C_2=1
\end{align}
よって,求める解は
\begin{align}
y=\frac{z}{x}=\frac{\sin x}{x}
\end{align}

複素数平面

ちょっと問題文(i)が見切れてしまっているので,(ii)だけ解いてる.何を利用するのかよく判らなくなってしまうが….
\displaystyle\cos \frac{\pi}{5}=\frac{1+\sqrt{5}}{4}の示し方はcos36°(=cosπ/5)の3通りの求め方 - Den of Hardworkingにわかりやすく載っており,代数的にも幾何的にも色んな示し方があるようだ.ここでは上記リンクの(3)の解き方をなぞってみる.
z
\begin{align}
z=e^{i\frac{\pi}{5}}=\cos \frac{\pi}{5}+i\sin \frac{\pi}{5}
\end{align}
とおくと,
\begin{align}
z^5=e^{i\pi}=\cos \pi+i\sin \pi=-1
\end{align}
が成り立つ.*1
-1を移項して因数分解すると,
\begin{align}
(z+1)(z^4-z^3+z^2-z+1)=0
\end{align}
z\neq-1より,(z^4-z^3+z^2-z+1)=0を得る.これを変形して,
\begin{align}
&z^2-z+1-\frac{1}{z}+\frac{1}{z^2}=0\\
\therefore~&\left(z+\frac{1}{z}\right)^2-\left(z+\frac{1}{z}\right)-1=0
\end{align}
一方,\displaystyle z+\frac{1}{z}=e^{i\frac{\pi}{5}}+e^{-i\frac{\pi}{5}}=2\cos\frac{\pi}{5}=t>0)とおくと,上式は
\begin{align}
&t^2-t-1=0\\
\therefore~ &t=2\cos\frac{\pi}{5}=\frac{1+\sqrt{5}}{2}~~~~~(\because t>0)\\
\therefore~ &\cos \frac{\pi}{5}=\frac{1+\sqrt{5}}{4}
\end{align}
この問題は高校範囲の知識で解けたが,そらおと1期の放送年は2009年なので,この当時はまだ旧課程であり,複素数平面は高校数学の範囲外のはずである.

線形代数

行列Aを次のように定める.
\begin{align}
A = \left(
\begin{array}{rrr}
1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 2\\
2 & 2 & -1
\end{array}
\right)
\end{align}

(i) A固有値固有ベクトルを求めよ.

固有多項式\phi (t)は,単位行列Eとして,
\begin{align}
\phi (t) & =|tE-A|\\
& = \left|
\begin{array}{ccc}
t-1 & 0 & -2 \\
0 & t-1 & -2\\
-2 & -2 & t+1
\end{array}
\right| \\
& = \left|
\begin{array}{ccc}
t-1 & 0 & -2 \\
0 & t-1 & -4\\
0 & -2 & t+1
\end{array}
\right| \\
&= (t-1)\{(t^2-1)-8\}\\
&=(t-1)(t-3)(t+3)\\
\end{align}
固有方程式 \phi (t)=0を解いて, t=-313
よってA固有値-313

 -3に属する固有ベクトル \vec{p_1}を求めると,

\begin{align}
A \vec{p_1}&=2 \vec{p_1}\\
\therefore ~ (A-2E)\vec{p_1}&=\vec{0}
\end{align}
掃き出し法より,
\begin{align}
\left(
\begin{array}{ccc}
4 & 0 & 2 \\
0 & 4 & 2\\
2 & 2 & 2
\end{array}
\right)
\longrightarrow
\left(
\begin{array}{rrr}
1 & 1 & 1 \\
0 & 4 & 2\\
0 & -4 & -2
\end{array}
\right)
\longrightarrow
\left(
\begin{array}{ccc}
1 & 0 & 1/2 \\
0 & 1 & 1/2\\
0 & 0 & 0
\end{array}
\right)
\end{align}
よって, \displaystyle \vec{p_1}=\alpha \left( \begin{array}{r} -1 \\ -1 \\ 2 \end{array} \right) .(ただし \alpha \neq 0.)

同様にして,1に属する固有ベクトル \vec{p_2}を求めると,
\begin{align}
A \vec{p_2}&= \vec{p_2}\\
\therefore ~ (A-E)\vec{p_2}&=\vec{0}
\end{align}
掃き出し法より,
\begin{align}
\left(
\begin{array}{rrr}
0 & 0 & 2 \\
0 & 0 & 2\\
2 & 2 & -2
\end{array}
\right)
\longrightarrow
\left(
\begin{array}{rrr}
1 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 1\\
0 & 0 & 0
\end{array}
\right)
\longrightarrow
\left(
\begin{array}{ccc}
1 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1\\
0 & 0 & 0
\end{array}
\right)
\end{align}
よって, \displaystyle \vec{p_2}=\beta \left( \begin{array}{r} -1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) .(ただし \beta \neq 0.)

更に同様に3に属する固有ベクトル \vec{p_3}を求めてもいいが,実対称行列の異なる固有値に属する固有ベクトルが直交することを用いて,外積を使って求めた方がちょっと楽だ.

\begin{align}
\left( \begin{array}{r} -1 \\ -1 \\ 2 \end{array} \right) \times \left( \begin{array}{r} -1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{r} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)
\end{align}
よって, \displaystyle \vec{p_3}=\gamma \left( \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right) .(ただし \gamma \neq 0.)

(ii) 行列に関する方程式 ~ A^3+aA^2+bA+cE=\vec{0} ~の係数 a b cを求めよ.

固有多項式\phi (t)は(i)で計算済で,
\begin{align}
\phi (t) &= (t-1)\{(t^2-1)-8\} \\
&= t^3-t^2-9t+9
\end{align}
よってケーリー・ハミルトンの定理より,  A^3-A^2-9A+9E=\vec{0}が成り立つ.
 \therefore ~ a=-1 b=-9 c=9

(ii)の続きは与式の次数が潰れていてよく読めないが,上式を  A^3=A^2+9A-9Eと変形して与式に代入していくことで次数下げをしていく問題だろう.

以上,空美中の宿題<数学>でした。
ちなみに授業の板書でも東○大学の入試問題がちらほら見えて怖い。

*1: zn乗すると,原点からの距離|z|n乗になり,偏角\arg(z)n倍になる.すなわち\left|z^n\right|=|z|^n\arg\left(z^n\right)=n \arg\left(z\right)となる.

DBR難易度表

DBR難易度表を公開しています。

docs.google.com

この難易度表はEASY CLEARを基準とし、主に☆11と一部の☆12を収録しています。

曲ごとに難易度と偏差(当たり外れの寄与)を設定しているのが大きな特徴です。また、先行研究の"DBR Diff Chart"*1や"☆11中速物量イージー難易度参考表"*2よりも難易度区分を細分化する試みを行っています。

難易度表は2人体制(DBR十段1名、DBR九段1名)で随時更新していきます。

どうぞお役立て下さい。

また、難易度表への意見、追加提案などあれば、遠慮なくどうぞ。

IIDX DP/片手 運指

DPや片手プレイの運指に関して、5鍵6鍵周りの捌き方は特に上達に際しての大きな課題であり、この分野では多くの先駆者達が議論を交わしてきた。

この記事では各分野で上位陣のプレイヤーの捌き方と理論を集約する。なおこの記事の内容は、あくまで本人の意識とは乖離している可能性がある独自研究である。

 

ereter氏の捌き方「もみもみ理論」

 

 もみもみ理論は、北斗押しの有用性を証明した理論である。実際にereter氏の手許動画では薬6⇔5、人2⇔3、親1⇔3が頻繁にかつ瞬時に入れ替わっており、中6や小5といった運指はあまり出現しない。また、56絡みの同時押しは薬指スライドで処理する。

 この理論では56絡みをおよそ薬指のみで処理するため、他の指の機動性を確保でき、特に発狂DPBMSのような高密度譜面に有利な運指と考えられる。

 但し、ereter氏の手許動画でも、13→24→35→46→57の16分二重階段で中6が、56絡みの同時押しでは中5が出現することがある。*1

 

SILENT氏の捌き方

 

 SILENT氏は座学等で様々な特殊運指を披露しているが、ここでは各プレイヤーの最もよく使う運指を考察したい為、座学を必要としない譜面(DPやDBRなど)を対象とする。 

 SILENT氏は56鍵絡みは主として中5と北斗で捌くと述べている。*2

その上で、DBRでの捌き方について次の様に述べている。*3

er.com/0721silent/status/80293349650728550DBRは常に初見なんだから難しい運指を会得するよりも北斗と中5(人によっては中6)みたいなシンプルな運指の速度と精度を上げる方が手っ取り速い。

 

 me$o氏の捌き方

 

 me$o氏は56鍵絡みは主として中6で捌くと述べている。*4

その上で、その他の運指が出現するケースとして、次の例を挙げている。

自分の場合だと24567が薬腹、123絡みで中3が間に合わない時に親擦りを使ってます。

 

小5は2456絡みの時に使いますね。間に合わない時は薬腹になる事もあります。同時押し以外だと使う事は滅多にありません。小6は一度も使った事無いですw

 

中5を使うのはCN絡みか57トリルくらいですね。123絡みの場合は親指を擦ってる場合が多くて、24567は腹押しです。

 

また、運指開発に関しては、次の様に述べている。

これは個人的な意見ですが、ある程度運指が確立したら、運指を多くするよりも今出来てる運指の精度を高めた方が良いと思っています。

 

 総括

 

この他にも、小5を多用するスタイルや小6を使うスタイルなど、人によって様々な運指スタイルが存在する。運指に関して、理想的には様々な譜面パターンに柔軟に対応できうる運指の引き出しを増やし、押せる配置(当たり配置)を増やすこと、また咄嗟に引き出せるようになる為に様々な譜面を触り経験を積むことが重要である。しかし、実際的には曩のSILENT氏やme$o氏の発言の様に、運指の開発を盛んに行うよりは自分の得意とする運指の稼働率を高めることが重要であるようだ。

 

「能」と可能補語「V得C」の混用について

不能V」と「V不C」の混用については、日本人学習者によく見られる間違いとして、多くの場所で取り上げられている。

 

楊徳峰≪日本人学汉语常见语法错误释疑≫(2008)に次の様な誤例が挙げられている。

1. *宿舍的钥匙丢了,我不能进去。

2. *他写的很好,但是不能说。

 1.の例文は、入って行くことが禁じられているのではなく、鍵がないからであるから、“不能进去”は“进不去”に改めなければならない。また、2.の例文は、話すことを禁じられているのではなく、話す能力がないのであるから、“不能说”は“说不出来”に改めなければならない。

 本書では、「不能」と「V不C」の違いについて、次の様に解説している。

不能V」はある物事をするのが情理上許可されない又は禁止されていることを示す。一方、可能補語「V不C」は、客観的条件によりある物事をすることが許されないことを示す。

 

また、東京外国語大学言語モジュール*1では、次の例文が比較されている。

3. 黑板上的字擦不掉。

4. 黑板上的字不能擦掉。

 3.はチョークで強く書きすぎたりしていて黒板の字が消せないことを表すのに対し、4.はまだ書き写している人がいるなどの理由で道理的に黒板の字が消せないことを表す。

このモジュールでは、「不能」と「V不C」の違いについて次の様に解説している。

助動詞“能”と可能補語が意味上等しいというわけではありません。道理上許されて「~できる/できない」という意味を表す際には,可能補語ではなく助動詞“能”を用います。

 

更に、吴丽君等(西川和男編訳)《中国語の誤用分析ー日本人学習者の場合ー》(2005)に挙げられている誤例を幾つか示す。

5. *如果没有兄弟姐妹,孩子们不能得到跟别人交往的机会。

6. *九月初旬,秋天的来临到来。不能听到蝉声。

7. *一边儿着急一边儿写的文章,一定不能写好文章。

 誤例5.の“没有交往机会”という結果が生じるのは、ある人の意思でやめさせたり、世の情理が許さないのではなく、ただ現実条件の制限を受けているだけであるので、“V不C”を用いなければならない。6.、7.も同様である。

本書では、「不能」と「V不C」の違いを次の様に解説している。

「ある人の能力や現実の条件に限界があって、ある事が実現されておらず、実現が不可能なこと」を表す時、主に“V不C”や“无法(没有办法)VC”を用いる。“不能”を用いる場合は相対的に少なく、これらを補う形で用いられる。

不能”が現れる時、まず「ある人の意思が許さない」ことを想起する。

 例:大伙得一起进去,半步都不能分开。

 

また“不能”は更に、「世の情理では許されない」ことを表す。このような文では“不能”は“不应该”に置き換えられる。

 例:有些观点是正确的,只是不能过早灌输给孩子。

 

“V不C”や“无法VC”が表すのは、“看不到”の様に、一般的に非自主行為/非自主的状態である。(中略)一方、“不能”の後の述語は、“看人不能看表面”の様に、自主行為を表す。

 

どのような場合に可能補語ではなく「能」を使うべきか

 

可能補語「V得C」は主に否定形で用いられ、肯定形が用いられるのは疑問文やその応答、反語に限られる。そのため、肯定の意味を表したい時、可能補語ではなく「能」などの助動詞を用いるのが一般的である。

 

吴丽君等(西川和男編訳)《中国語の誤用分析ー日本人学習者の場合ー》(2005)では、以下の様な解説がある。

多くの動詞には“V不C”構造が備わっていない。例えば“*打不败”や“*打败不了”の様な構造はあまり使われず、代わって“无法”や“不能”を使う。

また、以下の場合は“V不C”構造と相容れず、“无法”や“不能”を用いるべきである。

 

A. 一部の連動文

王老师病了,今天不能来上课。

B. 文の状況語が描写的で、動作の進行状況を描写するもの。

不能刑罚专家要求的那样,一刀截断陌生人。

C. 述語の前に程度副詞又は範囲副詞があって述語を修飾するもの。

你听了特别不能忍受吧。

 

註)引用元から一部適当な言葉に改変、又は日本語訳を施した箇所がある。

“게고수”について

고수(高手)は、ある分野に於いて特に優れた人を指す。

中国語に於いても“高手(gāoshǒu)”は名手や達人といった意味を表す。

 

さて、고수の頭に形態素がくっついて以下の様な語が形成されるようである。

 

게고수(-高手) 上手

초고수(超高手) 超上手

 

게고수の“게”という形態素は何に由来するのかわからない。게には「蟹」という意味があり、これが関聯してかはわからないが、“게고수”ー“감사합니다  🦀🦀”のように蟹🦀の絵文字がしばしば生えていることがある。게ってなんですか。プロがいたら教えてください。

 

ちなみに、ソウル方言ではㅔとㅐが合流しており、これに由来すると思われる“개고수”という表記も見られた。

 

(用例は全てTwitterから収集した。)

 


4月10日 追記

 

この記事を投稿した後、韓国語ネイティブから以下の様な説明を頂いた。

 「개-」(犬)というのは「めっちゃ」、「超」、「クソ」という強い意味のslang的な接頭語です(韓国では「犬野郎」というson of bitchに対応する(意味も攻撃度も)悪口があってそこから由来したと思われます) 使用例としては「개어렵다(クソムズイ)」、「개고수(超トプラン)」などがあります。

 「게-」(蟹)というのは最近韓国のDP界隈で流行ってる言葉で、発音の一致する「개-」(犬)の変形です。「개」ってかなり強いニュアンスを持ってるので(元々悪口から由来したので)、よりニュアンスが柔らかくて新鮮な(?)言葉である「게-」の方が最近使われてる感じですwwちなみに意味は同じです!

つまり、게ではなく개が元の形であり、개はいわば"fucking"のような意味を持つ形態素であって、게は개の婉曲形ということである。蟹🦀が犬🐕をやわらげている訣か。